"Express tikit" で出かけよう

 この記事は,とあるヘタレチャリダーが "Express tikit" の購入前に疑問に感じたこと,購入後の使用感などを素人目線から淡々と綴ったものです.過度な期待はしないで下さい.
 あと,部屋は明るくして,画面から tikit 1車身分は離れて読みがって下さい.

「だいたいこいつのせい」

 Feb15/2009.COMITIA 87.

 立ち寄ったあるサークルで,フリーペーパーを受け取った.ガジェット gadget(=ちょっとした小道具)を紹介する,そんなペーパーだそうだ.「『ガジェットフリークス』は、男のロマンをひたすら愛でるイラストレーターによる創作ブランドです」なんて書いてあるもんで,そこに紹介されている3つのガジェットは全て妄想ガジェットだと思いこんでいた.

 そこに・・・それがあった.
bikefriday Express tikit
折りたたみも展開もたった5秒、これだけで、どこへでもいける
そんな素敵な折りたたみ自転車です。

whitepaper 発行 "GADGET Freaks.01 preversion" より.
 という簡単な解説文と共に示された1枚の自転車(と女の娘)のイラスト.

 「折りたたみも展開もたった5秒」なるほど妄想ガジェットだなぁ.でもそんな自転車あったらいいなぁ・・・その時は何となくそんなことを考えていたのです.まさかそのペーパーに掲載されたガジェットが全て実在するものだとは露ほども考えず!(苦笑

実在したそいつ

 それから約1年.何のきっかけだったかで google ってみたら出てくるわ出てくるわ.何だ,tikit って実在する自転車だったんかい(爆)とのけぞったことを覚えている.しかしまぁ,一番安いモデルでも 10 万円台.一般的な視点からして自転車の値段としてはかなり高価い.かなり高価いが,興味がある.汽車に自転車積み込んでどこかへ行くってのは何度もやったことがあるけど,かなり手間で億劫なんだよ.それがこういうかっこいい折りたたみ自転車なら,気軽に持ち込めて行動範囲が広がりそうじゃない.行動範囲が広がれば,値段の高価さ分くらい取り返せるかな〜?なんて甘いことを考えながら,情報収集を始めたのでした.

 とっころがまぁこの自転車,米国 Green Gear Cycling って会社が作ってる BIKE FRIDAY ってブランドの製品シリーズの中のひとつだってコトはわかったんだけど,日本で扱っている店が高崎の CYCLETECH-IKD と大阪のイトーサイクルくらいしかないらしい.ゐや,実際には他にもあるんだけど,基本 Built To Order なのが吊しモデルのみの販売だったりして,「きちんと」扱っているのは事実上この2件だけらしい.
 註:CYCLETECH-IKD での tikit シリーズ取扱は終了しました.伝え聞いた話ではイトーサイクルでの取扱も終了したそうです.2014 年現在,東京のイークル,福岡のドライジーネが取り扱っているようです.

 なんつってたら東京に出向く用事ができて,それなら高崎の CYCLETECH-IKD までちょりーっと足をのばしてみようということになったのが Mar/2010 のこと.値段のことはともかくとしても,やっぱり実物に触れてみないと良いものかどうかも何もわからないしね.で,実際に触ってみたら・・・良いものだったんですよ.

 折りたたみ自転車ってーと凄い勢いでペダルを回してそれでも前に進まない姿ばかりを目にしていたもんで,折りたたみ自転車とはそういうモノだと思っていたんだけど,もぉ全然違うでやんの.走るったら走るったら.折りたたみや展開も速いのなんの.レクチャー受けながら丁寧にやっても 15 秒を余裕で切る.「折りたたみも展開も5秒」とメーカーは謳っているけど,なるほど嘘ではない.しかし IKD 店長氏曰く「あはは,確かに5秒はないよね〜 ・・・・・3秒だよ」「なおさら冗談きついですっ!」慣れれば&扱いを気にしなければ本当に3秒で行けそうな勢いである.

 で,変速機構が違ったり,ハンドルのカタチが違ったり,その他諸々いろいろモデルがあるんでいろいろ乗せてもらって,というか基本 BTO ってこともあってやろうと思えば好きなだけ変更できる・・・んだけど,どうやら "Express" というモデルがあたしに一番合っているようだというコトで,簡単な見積をもらってその日は帰宅.やっぱり高価いよなぁと呟きながら.それじゃあ手の届かない値段かというと,そうでもない.

 「例えばあっちの買い物予算は・・・まぁまた今度でも良いか(即決).こっちの買い物予算は・・・もぉどーでも良いやパスだパス(即決).で,tikit をどうするかと・・・」 他の予算は即決で凍結もしくは廃止したのに対し,tikit 予算は「やっぱ高価いよなぁ」と呟きながらも悩む.答は出たようなものですね.最終的にはこんなものができてきました↓



overview of "Express tikit"

 そもそも "Express tikit" ってのは tikit っつーチャリの1タイプだそうだ.タイプというか,パーツ換えるとそうなるというか.

 社名の "Green Gear Cycling" ってのはさておき,ブランド名の "BIKE FRIDAY".これは休日に出かけようとかそういうことじゃなくて,ロビンソン・クルーソーの従者フライデーからだそうな.で,tikit ってのは Ticket と Take it を組み合わせた造語だとか.「切符と一緒に汽車や飛行機で持って行け」という感じですかね.実際に用意されているモデルも "OneWay tikit","Express tikit","Season tikit","Speeding tikit" などと,シャレの効いたモノになってます.日本語にするとそれぞれ片道切符,急行券,定期券,それに速度違反の反則切符ってところですかね.最後のは何かと思いますが・・・

 とりあえず "Express tikit" の特徴を2つ.まずはハンドル.Hバーという形状のモノを採用しています.ブレーキの場所は見ての通り.奇抜な形状に見えるかもしれませんが,この向きっていわゆるママチャリと近い向きなんですよね.もしくは変形ドロップハンドルと考えれば.手首をひねることなくハンドルが握れる形状だそうで.H型の右側の根元に付いているのが変速レバー.基本仕様では左側の根元にくるくる回すと鳴るタイプのベルが付いているのですが,邪魔に感じたのであたしは発注時に「無し」にしてしまいました.代わりにドロップハンドルのバーエンドキャップらしきモノが突き刺さってます.巻き付けてあるように見えるモノはふつーにバーテープ.好みで巻き換えられます.

 もうひとつの特徴が後輪の9段変速で,"Express" の名に表されるカッ飛び仕様の心臓部です.capreo(子鹿)という小径車向け設計のシステムだそうな.ちなみにギアの歯数は 26/23/20/17/15/13/11/10/9.ついでにクランク側の歯数は標準で 53.タイヤは 16x1-1/4 サイズです.ギア比の計算が必要になった場合は参考にどうぞ.

 余談ながら最速ギアでペダルクランクを1回転させたときに前進する距離の計算なぞしてみますと,"Express tikit" は標準仕様で 7.6m,対してあたしが所持している 700x38c タイヤ,最大ギア比 42/11 のクロスバイクで 8.3m です.26 インチで変速機構のないママチャリで 5.0m 程度.小柄に似合わずカッ飛び仕様であることがわかって頂けるでしょうか.

オプション並べてよーいどん

 BTO だからってこともあるんだけど,色々選べます・・・というか標準仕様では何も付いてないってのもありまして,いろいろくっつける必要もあったりします.大抵は後付けもできるんですが,いくつか発注後に変更できないモノがあって・・・えーと,名前に☆印が付いてるモノは後から(正確には製作開始後には)変更できません.主に自分でくっつけたオプションを紹介します.

Frame☆

 自転車それ自体の大きさです.どういう乗り方をするのか.競輪みたいに思いっきり前傾した姿勢で乗るのか,買い物自転車みたいに上体起こしてまたーり乗るのか.それによって適切なフレームの大きさが変わって来ます故.どうするのかというと,身長と,股下寸法を訊かれ,もしくは測ってもらいます.それで S/M/L のフレームサイズが大雑把に決まって,あとは乗車姿勢やら身長やらで適切なサイズをメーカー側で作ってくれるんだそうな.

Color☆

 もちろん色が選べる.しかも BTO なので選択の幅が広い.追加料金が必要なかったり必要だったり,単色だったり2色だったり.どういう色が選べるかってのは取扱店やメーカーの Site をあたるなり google 先生に訊いてみるなりしてみて欲しいのだが・・・あたしが気に入ったのは "Midnight Blue" という光沢のある藍色.どっこいこいつは "Candy Color" と呼ばれる色群で「基本的には」 tikit では選択できない色らしい.なんだか塗装工程が特殊で,おまけに tikit は塗装ラインが他の製品とは違って云々.他の製品が "Candy Color" の塗装ラインを通っていない間を上手く縫って放り込まなければならないその他のため,月産4台だかそのくらいしか作れないのだそうな.しかもただでさえ追加料金が必要なところ,tikit の場合は特殊事情もあって更に割高になるという.しかし色ってのは結構重要なところで・・・呻きながら "Midnight Blue" に.こいつだけは値段を明示します.追加料金 US$300- 也.

Hyper folding system☆

 tikit はハンドルポストの根っこが折れるようになっていて,畳むときはここから折るんだけど・・・走るときは当然ここを固定しなければならない.ではどうやって固定する? まぁわかりやすいのはネジをくるくる回して固定する方法.これが標準.とっころがこの "Hyper folding system" という仕掛けをくっつけると折りたたみの過程でハンドルポストのロックが勝手に緩み,逆に組み立てるときはその過程でロックが勝手に掛かるようになる.実のところ「折りたたみも展開もたった5秒」を実現するにはこのオプションが不可欠.ギミックが増えるのでちょっと重くなるんだけど,この機構が最も tikit らしいといえば tikit らしい.他にもこれを装備すると自由にハンドルポストを畳めなくなるんだけど,欠点か,別にどうでも良いことか・・・

 試乗車を見てどういう機構になっているのかも理解したので,迷わず装備決定.曰く「女の人で迷わず付ける人は珍しいかもしれませんねー.こういう複雑な機構は皆さん嫌がるみたいで」・・・機械もいろいろいじりますからね,あたしの場合.フレーム構造の関係で,後付けはできないみたいです.

Brake☆

 ブレーキ."Express" の標準仕様はサイドプル・キャリパーブレーキなんだけど,V ブレーキに換装することもできます.というわけであたしは V ブレーキに換装.フレームの構造の問題で,後から変更はできないみたいです.

 ついでにキャリパーブレーキだと泥除けが構造上干渉するので,前輪はブレーキの手前でチョッキンナ,後輪はブレーキの取付場所自体が変更になります.更に取り付け可能なタイヤにもちょろ〜っと制限が・・・

 「何がどう違うって?」という方は Wikipedia 先生あたりに訊いてください. →Wikipedia「ブレーキ (自転車)」

Headset☆

 ハンドルポスト根元あたりのベアリングパーツなんかが詰まった部分.換えられるそうです.換えられるんだけど,違いは「わかる人にはわかる,わからない人にはわからない」といったところだそうで,「HDD は HGST/IBM 製に限る」的な話かもしれません.あたしは換えませんでしたが,これも後から変更はできないそうです.

Name Plate☆

 名前の入ったプレートが付いてきます.20 文字くらいまでだったかな.噂によると低解像度ならグラフィックでも大丈夫という話もちらっと.両面テープでくっついているだけなので,逆に気に入らなければ外してしまうこともできます.しかし,後で記述内容を変更することはできません.当然です.

Quick transit cover

 折り畳んだときにかぶせるカバー.別名「シャワーキャップ」.やっぱり屋外保管の時は雨ざらしにしないようにカバーを掛けておきたいですからね・・・ってんじゃなくて,輪行時に使用するためのモノ.普段は本体にコンパクトにまとめてフレームにくっつけておけます.フレームの "tikit" の文字の右上に付いてる黒いカタマリがそれです.

 ただし「カバー」とか「キャップ(帽子)」とかいう言葉が示すように,上からかぶせるだけのモノ.実は底面は出たままなんですねー.なのでそのまま車のシートに載せたりするとちょっと酷い目に遭うかもしれません.でも汽車に載せる分にはこれで十分です.飛行機は AirDO/ANA で受け付けてもらえることを確認済みですが,飛行機に限らず「預け荷物」とする場合はきちんとした輪行袋を使用する方が無難かと思われます.本当に簡易なカバーなので.

 ちなみにカバーを付けないと代わりにこんな持ち手が付きます.まぁカバーを付けても中からこの持ち手が出て来るんですけどね.

Fender Set

 マッドガード Mud guard なんて呼ばれることもあるけど,つまりは車輪の泥除けカバー.なくても走れるけど,これを付けないと雨の日の走行や,ぬかるみを走った後に後輪から飛んだ水滴が背中に点線を作ったり,前輪から飛んだ水滴がアッパーカットを喰らわせてくれたりします.

 雨の日なんて走らないし,ぬかるみも気を付けて走ればいいじゃん.そんなもん要らん要らん・・・それもその通り.しかし穴がひとつ.こいつがないと畳んだときに自立が不安定になるんですよ.後輪部分に真っ直ぐ上に立ち上がる細い柱があります.これの頂上部分が畳んだときに接地する部分のひとつになっていて,しかも泥除けとセットなんです.つまり泥除けを付けないとこの柱が付かない.代わりに後輪が直接接地するけど,斜めになってしまうという.そんな罠が待っていたりします・・・・・まぁどっちにしても安定性はいまひとつのような気がしますけど.最も安定するのは "Rear rack",詰まるところ後輪荷台をくっつけることですかねぇ.あたしは付けませんでしたが.

 ちなみに色に関して「柱」は車体色に合わせることができるけど,泥除け本体は黒しかないそうで.樹脂製ですしね.

Direct Mount Kickstand

 スタンドです.重要です.標準では付いてません.スポーツ仕様だとか,ほんの少しでも軽くしたいとか,そういう特殊な場合を除いて付いていた方が・・・というか付けないと困ってしまうような.ちなみに自転車スタンドというと後輪部分に付くことが多いですが,tikit の場合はペダルクランクの近くに付きます.バイクのサイドスタンドみたいですね.おかげでペダルクランクと干渉します(苦笑

Front/Rear Rack

 後輪の場合は荷台,前輪の場合はパニアバッグのキャリアになり,前輪は右側だけのモノと両側のモノがあります.小輪径ってこともあって,パニアバッグを付けるなら前輪になるそうな.右側だけのラックが用意されてるってのは,左側にバッグを提げると畳んだときに干渉するから・・・かな? 基本は黒色だそーですが,料金追加で車体色と合わせることができます.とりあえずあたしはパス.

Bell

 「荷馬車はカタカタカッタリコ,自転車チリリンチリリンリン」ってことで自転車にはベルを付けなければいけません.法律でそのようになっています.まぁ取り締まられるこたぁないでしょうが.で,"Express" 仕様の場合はハンドル左側に回すと鳴るベルが標準で付いてるんだけど,試乗車で乗ったときにこのパーツがどーにも邪魔に感じてしまって.「これって外せません?」「外せますよ.その分お安くなります.ちょっとだけ」・・・できるんですねぇ,Downgrade も.ってわけであたしは別のところに代わりのベルを付けてます.はぃ.

Pedal

 ペダル."Express" 仕様の場合は標準では付いてきません.発明当時の自転車をリスペクト Respect して地面を蹴って進みたいという需要向けに・・・なんてネタがどこかの blog にあったような気がしますがもちろんそういうことではなくて,自分で好きなモノを付けろということ.あたしは店の試乗車にくっついていた折り畳み式ペダルと同じ "VP Components VP-113" というモノをつけてもらいました.

Saddle

 サドル.これも "Express" 仕様の場合は標準では付いてきません.下らないギャグを思いついたんだけど下らないので横に置いておいて,自分で好きなの選んで付けろってことです.これまた値段はピンキリあるし,安いから良くない,高いから良いものってわけでもなく,最後まで悩んだところでした・・・・・結局,fizik 社の "Aliante life" ってものをくっつけました.良好です.

Chain-ring, Gear-guard and Crank

 ペダルクランク,それにチェーンを回すための歯車,そしてズボンの裾を歯車への巻き込みやチェーン汚れから(ある程度)守るための部品です.これは全て標準でくっついているので,ふつーは換装したりする必要は全くありません.えぇ,ふつーは.しかしあたしがサドルの次に悩んだのがこの部分でした.

 ゐや,展示試乗車でちょっと仕様の変わったのがいてさ.標準仕様は右写真の左側のように,ギアの外側に付くプレート(ギアガード)は無塗装なんだけど,右側のように本体同色で塗装した奴がいることに気づきまして.「これって塗装できるんですか?」「できますよ.割高になりますけど」というわけで最初は本体同色のギアガードをくっつけることになったんだけど・・・

 後日,いろいろ調べてみるとここのギアを変えることもできるってコトを知ってさ.ゐやー,標準仕様だとギアが軽すぎると思ってたんだよね.軽く走るギアよりも,もっと重い(=速く走れる)ギアが欲しい.そのためにはもっと径の大きい(=歯数の多い)ギアを付ければいい.標準では 53T という 53 山あるギアがくっついてるんだけど,56T とか 60T なんてのも出回っているらしい.「これくっつけられます?」「できますよ」というわけで "Power Tools" の型番 831-092 というものに換装することに決定.

 さらに紆余曲折の結果,この社外品のギアとペダルクランクも本体同色でがっつり塗装してもらうことになりまして〜.もちろんその分割高になってますけど〜.やっぱ色は重要ですから〜♪

 ちなみにこの 53T→60T 化の結果,最速ギアのペダル1回転で進む距離が標準の 7.6m から 8.6m へ Ltd.Express 化しています.その代わり坂道がちょっと苦手に.なんつってたら・・・IKD 店長氏曰く,標準ではクランクの内側にギアを,外側にギアガードがくっつくんだけど,あたしの場合は外側にだけガード一体型のギアが付いていて,内側は空席になっている.ってことは? 内側に登坂用の 44T くらいのギアをもう1枚くっつけることもできると.チェーンはその都度手で掛け替える必要があるけど,そういう裏技もあるそうな.

 で,後日の話になりますが実際に 44T のギアを付けてみました.銀色では格好悪いので,"Midnight Blue" に塗装してもらって・・・チェンリング本体よりも塗装代送料その他の方が遙かに高かったなんてのはもう書くまでもなく.
 とりあえず見た目はご覧頂いての通りです.走行性能に関しては・・・街中では使う機会はありません.しかし長い峠道を走る際には大きな威力を発揮します.60T とのメリハリも付いていい感じです.

 それじゃあフロント2段×リア9段の 18 段ギアになるね! というと実はそうは行きませんで.フロント 44T の状態でリアを高速側に叩き込むとチェーンが外側に持って行かれる関係で 60T のギアに当たるようになってしまうんです.右写真のように.
 低速側のギアなら全く問題はありません.というわけで実用で使えるのは フロント 60T ×リア9段+フロント 44T ×リア5段(低速側)の 14 段ってところでしょうか.登坂用ですし,特に不都合は感じていません.

発注から納品まで

 高崎の CYCLETECH-IKD の場合は見積価格の概ね半分の前払金を支払って契約成立.正式注文となり,1.5〜2ヶ月程度で納入可能になるそうです.引き渡し時に残額を支払い,と.ちなみにいくらだったかというと・・・・・ US$2,500 を超えたところまでは数えた.実際の支払額が JPN\300k を超えなかったことだけは確か.当時の為替レートは US$1 = JPN\93 程度でしたが,さらに為替手数料やら何やらが乗りますので・・・

 ちなみにあたしの場合は Apr/2010 頭に発注,May 末に日本に到着.札幌まで発送することも可能だったそうですが,最初の shakedown 等も兼ねて高崎まで取りに行きました・・・ってのが Jun 半ばの話.

 新兵器導入で行動範囲も広がりますし,高価かった分,これから取り戻しますよ〜?

700c クロスバイクと比較

 ・・・してみました.適当な尺がないので,長さ 1m にセットしたスノーブラシを物差し代わりに・・・余計だったかな?(汗

畳め!

 畳んだり展開したり,その動きは YouTube あたりに行って tikit ってキィワード放り込むといろいろ出てくると思いますが(汗)自分自身が動画等ではよくわからなかった部分も含めてちょろっと解説します.

 動画も3つだけ紹介しておきましょうか.
  1. Bike Friday tikit - 01 - the fastest folding bicycle:Hyper folding 仕様車を畳む動画です.
  2. Bike Friday tikit - 02 - the fastest folding bicycle:Hyper folding 仕様車を展開する動画です.
  3. tikit Model T Demo:畳むところと展開するところを(英語で)詳しく紹介してくれます.非 Hyper folding 仕様になります.

下準備

 別にそれをしなきゃ畳めないってわけじゃないんですが・・・スタンドは先に上げておいた方が良いです.ペダルクランクは地面と平行,左のペダルが後ろに来るようにしておくと良いみたいです.ついでにバンドで固定しておくとクランクが暴れず,後述するような傷が付くのを防ぐことができます.ギアは9段あるうちの5段目あたりか,もしくは目一杯軽い側にしておくと変速装置やレバーが他と干渉することを防げるようです.

 ※以下の手順は「敢えて順を追って解説するとこんな感じ」というものです.本当にこの手順で畳むと相当苦労するハズです.実際の手順は先に挙げた動画で確認して下さい.

シートポストを折る

 とりあえずシートポストを折ります.もとい畳みます.サドルの後ろあたりからシートポストを斜め上方向に叩いてやると根元のロックが外れます.そのまま倒してやると,"Quick transit cover" の手前にある銀色の金具に引っかかってシートポストがロックされます.

本体を折る

 シートポスト根元部分が持ち手様になってます(写真矢印)んで,ここを持って上に持ち上げると後輪部分が折れてきます.このまま後輪部分をひっくり返すようにしてやり,更に地面に押しつけるような感じにしてやると・・・

 このカタチでロックされます.この状態になると持ち上げても後輪は落ちてきません.どうやってロックしてるのかは後述します.

 ちなみにシートポストの根元部分,2009 年前半頃までの旧タイプはもっと「持ち手」って感じの異なる形状をしていましたが,シートポストの強度不足が判明したとかで現在の形状に改良されました.ゐや,話を聴く限り強度不足が生じたってのは相当特殊かつ苛烈な使用環境下での話のように聞こえるんですが・・・ぶっちゃけ重量オーバーというか・・・やぁ,海の向こうの人は侮れません.

ハンドルポストを折る

 この状態になるとハンドルポスト根元の "Hyper folding" のロックが解除されています.このままパキッと折って,ハンドルポストに付いてる突起をネームプレート脇の金具に引っかけます."Hyper folding" ではない場合は手動でネジを回してロックを外して,以下略です.

これで完成

 です.大きさ比較のためにまた長さ 1m のスノーブラシを置いてみました.前輪,後輪泥除けの柱,それにシートポスト根元に隠れていた「脚」の3点で支えるカタチになっており,バランスは実はあんまり良くありません.ハンドルのある側によく倒れる感じがします.

 反対側から.こんな感じです.この状態でシートポスト根元部分の「持ち手」を持ってゴロゴロ転がしていくこともできます.前輪ひとつでバランス取りながらなので,慣れないとちょっと重いですけどね.

 別の角度から.H型のハンドルがちょっと飛び出てます.フラットバー型のハンドルならもちっとコンパクトにまとまるのかな.もしくは畳むときはHハンドルの角度を変えられるようにするとか・・・

展開

 ここまでの逆をやると展開できます・・・と云いたいところですが,無理ですね.ハンドルポストは立っても "Hyper folding" のロックは緩んだままですし,後輪部分はロックされたままで落ちてきません.

 というわけで,まずはシートポストのロックを手で外してやります.右写真,"Quick transit cover" の手前にある銀色の金具ですね.更にハンドルポストを立ち上げ,シートポストとハンドルポストを持って持ち上げ,シートポストを立ち上げるようにしてやるとポロッと後輪のロックが外れます.後は・・・畳んだときと逆ですね.はぃ.

カバーを掛けよう

 "Quick transit cover" の黒いカタマリはベルクロでとじられています.これを開けると中からカバーが飛び出します.

 伸縮性のある素材でできてますから,引っ張るようにしながらカバーを掛けていくと・・・

 こんな感じにできあがります.シートポスト根元の「持ち手」が外に出てきますし,"Quick transit cover" の黒いカタマリがあった部分にも持ち手が残りますから,この2ヶ所を持って持ち歩くことができます.

 こんな感じで前輪部分をガバッと持ち上げて,泥除け部分に引っかけて前輪を露出させてやると,カバーを掛けた状態で転がしていくこともできます.

 汽車に載せていって,行った先で走るという用向きにはこの "Quick transit cover" で十分です.国内航空路線であれば預け手荷物としても預かってもらえます.しかし繰り返しになりますが,本当に簡易なカバーです.「ちょっとした移動」ではない場合や,飛行機利用のように「預け荷物」とする場合は,きちんとした輪行袋に詰めていくことをお薦めします.
 本体よりもカバーがダメになりそうなんですよ.それに,きちんとした輪行袋の方が持ちやすい感じがします.右写真はオーストリッチの「ロード 520(相当の旧製品)」に,外側からベルクロ式の結束バンド 2m で絞めた様子@CTS Arrival.手間がかかり,やや重くはなりますが,"Quick transit cover" の状態より持ちやすく,安心感もあります.小径車用の輪行袋もあるそうですが,大は小を何とやら.特に不便は感じていません.

詳解・後輪ロック

 tikit の構造の中でも特によくわからないのがこの後輪部分のロック機構.秘密はここにあります・・・えーと,右写真は折り畳んでいる途中の様子ですね.ちょっと拡大してみます.

 A はメインフレーム部分にある突起.B はチェーンリングの裏側・後輪フレーム部分にあたります.折り畳むと A の突起が B の穴にはまりこんで,ロックが掛かる仕組みです.対して展開時はシートポストの根元部分にある C が B を押し広げ,穴にはまりこんだ A を解放するという仕組みになっています.だから「持ち上げてやって,シートポストを起こすと後輪ロックが外れる」んですね.

 このような仕組み故に,この部分はしょっちゅうこすれて塗装が剥がれてしまいます・・・ちょっと悲しいかな.

詳解・Hyper folding system

 もうひとつ,わかりにくいかな〜?という機構が "Hyper folding system".とりあえずハンドル根っこ部分を見ると,ワイヤーがロック金具を引っ張るようにしてハンドルポストをロックしていることがわかります.で,このワイヤーがどこへ行くかというと・・・

 ハンドルポストの中を通って根元から出てきます.ここからメインフレームの脇を通って・・・

 ペダルクランクの下を通って・・・

 後輪フレーム部分で止まります.というわけで後輪フレーム部分を畳むとワイヤーが緩んでロックが外れる.後輪フレームを展開するとロックが掛かる.単純といえば意外に単純です.

車に積んでみよう

 というわけで車に積んでみます.対象は日産の FHK11「マーチ・カブリオレ」.見通しを良くするためにオープンにして撮影していますが,別に屋根を開けなくても積めるモノは積めますし,積めないモノは積めません・・・では早速 tikit を積んでみましょう.

 さすが小径車!そのまんまで搭載可能・・・とは行きませんでした.やはりそれなりに長さがあるので,はみ出してしまいました.

 畳んで適当な輪行袋に詰め込めば,余裕で後席に搭載可能です.シートベルトなどで固定してやりましょう.
 え? ゐやぁ,この車ってば車検証上は4人乗りですが,基本2人乗り,後席はラゲッジスペース luggage space ですってば.ここに人が座るのは非常時ですよ(笑

 対してこちらは 700c のクロスバイク.後席の足元にはめ込んでやることでなんとか入る感じです.車輪も輪行袋の中に入るんですが,入れてしまうと増加した厚み分で足元スペースに入らなくなってしまうので,車輪は別の袋に入れて後席の上に積んでいます.

付属品

 いろいろ付いてきました.並べてみます.

 マニュアルに,パンフレット類に,それから解説動画を収めたと思しき DVD です.もちろん全て英語です.

 ぱらぱらっとめくると,各部の名前,折りたたみ/展開の方法というそのまんまな内容から,簡単なメンテナンス方法やら,飛行機に載せるときの注意点やらが書いてあります.まぁ飛行機の話は米国を基準とした話のようですが.

 それから細かいモノですね.右下のクランク状の黒い物体は六角レンチ.片側が 6mm,他方が 5mm になっており,これ1本でハンドルやサドル類の調整ができるようになってます.
 その上の白いモノは車輪に取り付ける反射板.好みで取り付けましょう.
 左下のリング状のモノ,傷防止のパッドと思しき軟樹脂製の部品,ネジ4本.これは・・・何に使うんでしょうね?
 最後に左上の暗紫色の輪状の何か.どうも飴っぽいんですが・・・口に入れる勇気はあたしにはありません.なんか割れてるし.こういうのを付けるのが米国流なんでしょうか.

 もうひとつ,写真はありませんが防犯登録のための販売証明書が交付されます.詳しくは後述します.

走ってみてその後

走行性能に関して

 ロードバイクに近い作りになっているので,50km でも 100km でも走っていけます.しかもそれが気軽に汽車に乗せていけるってんだから行動範囲も自然と広がろうってもんです.まぁ混雑する時間帯に持ち込むには憚られる大きさではありますが.
 小径車ですが,それに合ったギアが装備されているので,柄に似合わずすいすい進んでいきます.ただ,小径のせいなのか,片手走行になったときなどの安定性に難があります.慣れれば全く問題ないのですが,それまではギアチェンジなどで怖い思いをするかもしれません.

Hバーハンドルってどうよ?

 一長一短です.
 先に短所を上げてしまうと,畳んだときの横幅が大きくなること.特にカバーを掛けたときにHの字の頂点部分が飛び出すわ引っかかるわで時々憎々しくなってきます.
 対して,"Express" の名の如く走りたい用向き,長距離を走りたいというような用向きには真っ直ぐなハンドル(=フラットバー)より疲れにくく,走りやすいのではないかと思います.気が付くとH字の上の頂点部分に手を添えていることが多いですね.もしくは縦棒と横棒の接点あたりか・・・って,ここじゃないとブレーキ握れないんですけど.横棒部分に手を添えることはあまりありません.

Hyper folding system の落とし穴

 これが最初ちょっとやられました.先述の "Hyper folding system" の構造上,後輪部分を展開するとハンドルポストがロックされるんですが,きちんとハンドルポストを立てた状態で後輪を展開しないと右写真のようになってしまうことがあります.何だか走っててハンドルポストがガタ付くな〜と思っていたら,ちゃんとロックされていなかった,と.

 ロックするワイヤーによってハンドルポスト上部にテンションがかかり,この状態ではハンドルポストを畳むことができない状態になっていますから,走行中にいきなりハンドルポストがボキッと折れてくるようなことはないと思います.ワイヤーが無事ならば.しかしまぁ危ないことには変わりありませんから,展開時には注意しましょう.ハンドルポストをきちんと立ててから後輪を展開.ロックがきちんとはまっていることを確認してから走行!

 それとは逆に,折りたたみ時にロックが上手く外れてくれずにハンドルポストが折れないってこともありました.滑りが悪くなっていたかな? 後輪部分を畳めばワイヤーは緩んでいますから,ロック金具を手で外してやることになります.

こんなところに傷が付く

 右のペダルクランクです.畳んだり,畳んだ状態で地面に置いたりしたときに擦ってしまったみたいです.塗装が剥がれています.ぁぅぁぅ.
 散々傷を付けてから気付いたのですが,先述のように畳むときにクランクを固定しておくと傷が付くのを防ぐことができます.

 こちらは左側のペダルクランク.後輪フレーム部分の折りたたみ/展開時にクランクの位置が悪いと,シートポストの根元部分とぶつかり/こすれて傷が付くことがあるそうです.ちょっと注意したいですね.これも先述のように,畳むときにクランクを固定しておくと傷が付くのを防ぐことができます.

 それから・・・写真はありませんが,後輪の泥除け部分が地面とこすれて傷が付きます.どういうことかは先に紹介した3番目の動画の 0:57 秒付近を見ればご理解頂けるかと.メーカー側もこのあたりは理解しているらしく,この部分に傷防止のためと思われる透明なテープが貼り付けられています.

防犯登録

 意味があるかと問われるとちょっとびみょーな防犯登録.でも義務らしいので,一応やらなければいけません.
 購入時に防犯登録のための販売証明書が交付されますので,これを持って近所の自転車屋に行くと防犯登録の手続をしてくれます.この際に車体に貼るシールも交付されます.高崎の IKD でももちろん登録できますが,群馬県での登録になってしまうため,群馬県在住以外の場合はトラブルの原因になります.
 防犯登録ついでに,小径車のメンテナンスを行ってくれる自転車屋を開拓するのも良いでしょう.IKD 店長氏には「札幌なら白石の『秀岳荘』が良いかな?」と紹介して頂きました.行ってみると小径車の取扱の多い店で「なるほど」と・・・

乗車ポジション

 折りたたみ自転車は,畳むときにハンドルポストを抜いたり,サドルを下げたりする必要があるものがありますが,tikit はそんなことはありません.一度乗車ポジションを決めたらあとは動かす必要なし.そのままで畳め,展開すればすぐに走り出すことができます.これ,tikit の隠れた強みです.その分ちょりーっと畳んだときの大きさが大きいような気がしますが・・・何と比べてるんだと問われれば,英国製のあいつですよ.

総評

 良い買い物でした.いろんな意味で.(苦笑

いろいろ走った記録など

 まぁ参考までに・・・というか参考にもならん気もするけど.

[written on Jul27/10]
[last updated Jul31/11]


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